この時期になると、得意じゃない仕事があります。
スタッフの目標設定の面談です。
マネージャーになったのだからやりなさいよって感じですが、元々個人目標など「全力疾走、結果オーライ」みたいな現場にいたものだから、はっきり言って苦手です。
この会社に入ったとき「なんてお堅いところだ」と思ってしまったのは事実です(笑)
ただ、会社において、この目標ってやつはとても大事で、皆の評価にもろに関わるし、チームとして今後どうしていきたいか、ということを目標を通じてスタッフに浸透させる良い機会でもあると思います。
自分にとってこの目標設定が苦手な理由は、自分もそうだけど常に数字で表されるものにしないといけないというルールです。
すなわち、売上に貢献できるようなことを目標にしてくださいねってこと。
現場のカネに対する意識
自分は、もろに制作畑の作る側の人間でした。今でもはっきり言ってそっちの部類です。
なので、たぶん「カネ」という感覚の分野が、同じようにマネージャーをやっている世の中の人に比べてだいぶ欠落してしまっていると思います。
長い間、自分を駆り立てる原動力は、「カネ」ではなく、いかにその仕事がおもしろいか、没頭できるかということだったから。
良いものを作るためには、最後の一滴まで脳汁を絞り出し、工数土返しでクリエイティブに没頭する、というのが現場の考え方でした。
だから、売上や営業利益と言うものを目標の中に混ぜ込まれるのを、現場の人間は嫌がる、と言うより理解をあまりしない。
ただ、最近立場がかわって、考え方が変わってきたと思います。
受託をやる限り、作ることに対して「理由」や「意味」、それがどうなっていくか、という部分にフォーカスをした時に、必ずビジネスというところにぶち当たる、
すなわち、これを作ったことで、クライアントがどんだけ儲かるかというところにたどり着きます。
自分たちが行う、設計もデザインも実装も、このためにやるにほかならないわけです。
「作る」という行為自体には正直意味はないのです。
こういう感覚を覚えたのは、マネジメントをやるようになったからというより、昔よりクライアントに近い位置で仕事をできるようになったからだと思います。
だからマネージャーになって、チームが「より良いクリエイティブ」をしていけるようにするためには、出来る限りスタッフをクライアントに近くで仕事ができるようにし、本来の「作る」意味をしってもらうことなんじゃないかって思うようになったのです。
そう考えると、「カネ」がどう回って君らの手元に来るのか?ってことを理解してもらう必要があるというところにたどり着きました。
「売上」というものが、各スタッフの目標に入っていることは、ただ「作業」をいっぱいして、案件売上から按分される割合を多くしてもらうことではないのです。
クライアントが儲かるためのことを考えて作り、継続した仕事をもらったり、一回目より二回目の依頼の費用感を上げてもらうことなのです。
要は、「お金を生む」ということを、出来る限り実感してほしいのです。
だから、今ディレクションやプロジェクトマネジメントという分野を現場スタッフに浸透させ、出来る限り前に「クライアントに近いところ」に出てもらうことに取り組んでいます。
成長に対する投資
ここで、問題がひとつあります。
上記で書いた、僕がスタッフに対して付けてほしい「カネ」の意識向上は、時間がかかるのです。
そりゃそうです。自分の領域から一歩も二歩も外に出て、本質的な「ビジネス貢献」というところに踏み入って行くのは、即席にできるものではないでしょう。
そういった仕事を常に皆にアサイン出来ない、自分の力不足もあります。
受託現場にいる限り、本当に「THE作業」というような仕事も多く発生してしまうのも事実です。
そんな中で、急に生まれたチャンスの案件に、経験してほしいからという理由で、慣れない現場スタッフを放り込むと、当たり前ですが自分やディレクション経験が豊富なディレクターが入るより、無駄に時間をかけてしまうでしょう。
そうなると、案件の営業利益は下がり、また作業レベルなら復数案件回せるスタッフが、一案件であっぷあっぷしてしまいます。要は生産性が落ちます。
そのせいで本来できる仕事を受けられなくなってしまうかもしれません。
会社としては、もちろんよろしくない状況になってしまうのです。
でも、僕はこれは絶対に必要な投資だと信じています。
なので、色々と会社に掛け合って調整するようにしています。
以前いたベンチャー企業であれば、このあたりは営利というものを度返しにして、ガッツリ投資されていたんでしょうけど、今の会社では中々難しいところではあります。。。
直近のリスクを把握した上で、1年後、3年後、5年後のリターンを会社に対してきちんと説明して、理解を得ていくのは自分の仕事だと実感しています。
そして、僕がこの投資が必要だと思う理由があるのです。
制作者に生き残って欲しい
ここ最近のITの技術革新は本当にすごいと思います。
しばらく前に話題になったgoogle翻訳、本当すごいですね。
これでバンドマン時代の海の向こうの友達とfacebookで会話するのも楽チンになりました(笑)
でも、その陰でちょっとした翻訳サービスを提供していた企業や、安価で手軽な翻訳作業をしていた人は、大きな衝撃と脅威を受け止めたのではないかと思います。
コンピューターはこうやって僕が、アナログな脳みそで文章を書いている間も世界のどこかで進化しています。
そして、多くの記事で書かれているように、「オペレーション」と呼ばれる作業は、徐々に姿を消していくのでしょう。
人工知能の精度を上げるのは、データ量だという話を聞きました。
19世紀からあった人工知能プロジェクトがやっと最近になって日の目を見はじめているのは、googleやIBM、facebookのような膨大なユーザを抱え、膨大なデータを有する企業がついに、その演算技術を活かせるだけのデータがたまり始めたからなんでしょうね。。。
このデータ量はこの先さらに加速してたまっていくでしょうし、上記企業に追随する企業もどんどん精度の高い、人に代わるサービスを提供し始めると思います。
スマートフォンが瞬く間に広がってしまったように、僕らののんきな想像をはるかに超えたスピードで広がっていくのではないかと思います。
多くの記事には、コンピュータが人の仕事を奪うと同時に、新しい人がやるべき仕事が生まれると書いてありますが、自分たちのような制作者はきっとそちらには行かないでしょう。
それは「作ること」が好きだからです。
これは制作者にとって譲れない領域なのです。
統計的に優れた答えを素早く導くことで、人はコンピュータに勝てないでしょうし、24時間365日、稼働し続けることはできないでしょう。
遠い将来か近い将来か、取引先が人に代わるテクノロジーの導入を決めるとき、僕はマネージャーとしてスタッフを切らなければならなくなるかもしれません。
それは本当に悲しいことですし、そうならないようにする必要があります。
そのために必要なことは、一つ、「カネ」を生み出すことです。
「カネ」がどこから生まれて、自分のところにやってくるのか、よく考えて欲しいです。
制作者にとって嫌な「売上目標」。これもWBSしてみると、どこから発生するかわかりますね(笑)
そして、売上目標を達成するための行動目標。
全ては、繋がっています。
自分の居場所を、守るためです。
そう考えると、「カネ」に対する考え方も、少しは変わるのでは?