ここ最近良く聞く「フルスタック」。
何でもできる人。。。それが「フルスタック」だとしたら、自慢じゃないけど、僕自身はある程度「フルスタック」だと思う。

企画提案書から、ヒアリング後の情報設計、画面設計しながらある程度サーバサイドの要件もまとめられる。
課題を整理して、UX方面からの切り口でUIデザインすることもできるし、コンセプトに寄せてグランドデザイン自体を作ることもある。
Jqueryくらいなら自分で扱えるので、絵で伝えられないところは、モックにして見せることもできる。
最新テクでなければ、普通にコードも書けるので、パツってるコーダーを助けることもできるし、一般的なトップ、一覧、詳細くらいはワードプレスで3日で実装できると思う。

でも、僕の思う「フルスタック」はコレジャナイ。
そう結果的に言うと、僕は望んでこうなったわけじゃないし、こんなこと大したことではないと思っている。

世間は「フルスタック」を求めているみたいだけど、みんな本当に分かってるんだろうか?って話を書きます。

みんな「フルスタック」に何を求めてるの?

これはよく色んなところに書いてある。
要は、時代が変わってしまったから必要になったってこと。

エンジニアで言えば、昔の基幹システムなんて使い勝手とか何?って世界だったと思います。
素のテーブルで作られた表組みに、素のグレーのサブミットボタンがよくわかんない位置にくっついてる。。。

管理画面の改修プロジェクトとかで、既存のシステム見て唖然とすることはよくあります。

そう、昔は「Must」さえ対応できていれば、要件を満たせた時代だったのです。

ですが、WEBの技術(特にクライアントサイド)が発展するに従って、要件は「Must」はやって当然、「Better」を求めるようになり、「Best」が選ばれるようになりました。
デザインの世界では、元々そうでしたが、よりシステマチックな領域にも「Better」「Best」の要件が広がっていったのです。

更にWEBでできることが広がり始めると、各社こぞって「WEBサービス」事業を展開しだしました。
今となっては、この「WEBサービス」もレッドオーシャンになっています。
「サービス」である以上、ユーザーが選ぶ基準は必ず「Best」「Better」なものになります。

ユーザーが何を「Best」と思うのかということを作り手が考え、最新のシステムを使って具現化していかなければならなくなったのです。

だから、「デザインだけ」「システムだけ」という「作業レベル」ではものを作ることができなくなった、作っても売れなくなってしまったのだと思う。

そこである時、作って欲しい人が「フルスタックマン」に出会ったのです。
それは、最新技術を理解し、サービスに必要かつ実現可能な機能を具体的にイメージできる「デザイナー」だったかもしれないし、ビジネスデザインを理解し、かつ理想的な画面をイメージできる「エンジニア」だったかもしれない。
それはもう、理想的な人材だったことでしょう。

ただ、サービスを作るにあたって、「フルスタックマン」が一人いれば出来るんだろうか?

無理です

そう、みんなが「フルスタック」が欲しい理由は、作ってくれる人が欲しいわけじゃないんです。

「便利屋さん」と「フルスタック」の違い

冒頭で僕のスペックについて書きましたが、なぜそのスペックになったのかということに少し触れます。
なりたくてなったわけではないのです。

僕のいた小さな制作会社は、小さいながらに、バシバシと代理店さんの仕事をこなす、割と激しめの会社でした。
この業界の通例ですが、人の出入りが激しくなかなか定着しませんでした。

先月までいたディレクターが突然いなくなる、エンジニアが定着しない、デザインを手伝ってくれるバイト君もやめてしまった。。。
でも、売り上げのために引き続き同じ量の仕事を入れ続けなければならなかった。
必然的にやらなきゃいけないことが増えた。ワイヤーもデザインも実装もやったことないなんて、言ってられなかった。
ディレクターがいなくなってしまった時は、代理店さんに言って話も聞かなきゃいけなかった。
ある時は何か実装に詳しいデザイナーとして、ある時は中途半端なデザインでもいい感じに組めるコーダーとして、ある時はCMSの組み込みしながら、フロントエンドも同時に組むプログラマとして呼ばれた。
ディレクターに話すより楽だし話が早かったんでしょうね〜。
そのおかげもあって、お呼びがかかる機会だけはすごく増えた。

そして僕は「便利屋さん」になった。

そう、これは「フルスタック」ではない。「便利屋さん」だ。
僕は、この「フルスタック」と「便利屋さん」の違いをこんな感じで定義する。
「フルスタック」は上流工程で俯瞰的な目線で動き、「便利屋さん」は作業で必死に飛び回る。

同じように何でもできる人だが、この二つには決定的な違いがあり、「便利屋さん」には決定的に足りないものがある。

フルスタックであるための条件って??

「便利屋さん」に足りないのは何だろう?

答えは、ディレクションスキルです。
同じように何でもできる人ですが、「便利屋さん」は、人を動かすことができない。もしくは動かす力が弱い。
だから自分自身が、プロジェクトの様々な工程に飛び込み、スーパーサブとして点を取りに行くしかないのです。

実質、上記で書いた便利屋さんとしての仕事は、一つ一つを見てみると、フルスタックである必要はなくて、せいぜい2スキル、3スキルしか使っていません。

プロジェクトにおいてフルスタックの人間がいるメリットは、全ての工程をある程度内容を理解して、現場の作業者と的確なコミュニケーションをとり、クライアントに分かりやすい言葉で状況を話せるということです。
そうすることで「Better」「Best」なものをよりスピーディに作ることができるのです。

だから、「フルスタック」であることは、「何でもできる」こと以上に、「優れたディレクションスキルを持っている」ことの方が大事だと思うのです。

よく採用面談をすると、「何でもやりたいです」「WEBサイトを一通り作れるようになりたいです」という意気込みを聞きます。
大いに結構です。が、そこにもし「他の人と力を合わせて」って言葉が付け足されていたら、僕は即採用するでしょう。

フルスタックのいる理想的なチーム構成

ここまで書いた中で感じると思いますが、フルスタックな人はとても貴重で、少ないです。
プロジェクトを進めるにあたり、全員フルスタックマンでチーム構成するのは、ほぼ無理でしょう。
でも、安心してください。
皆がフルスタックである必要はありません。
「便利屋さん」の定義でも書きましたが、実際に現場において各工程で手を動かすにあたっては、せいぜい2スキル、3スキルしか使わないのです。

だから全員フルスタックにするとはっきり言って、ゲームとかで言う「オーバーキル」です。持て余します。

まずは現場スタッフの仕事の幅を広げる。前工程、後工程の仕事に対して興味を持たせることが大事です。
仕事の幅が広がることで、工程同士の重なる部分が生まれ、コミュニケーションがスムーズになり、お互いに気を使えるようになります。
そうすることで、圧倒的に時間に余裕が生まれるはずです。
これがないと、フルスタックの人がプロジェクトリーダーをやっても、その人の負荷が半端ないものになって潰れてしまいます。

column22

そして、この現場スタッフの仕事の幅を広げるための教育係として一役買うのもフルスタックな人でしょう。
そう、フルスタックな人は、ディレクションスキルだけでなく、マネジメントスキルも必要なんですね(笑)

めっちゃ大変やん。。。

自分は本当にまだまだです。
ですが、チームを持たせてもらった以上、やりますよー。やったるよー。

「俺フルスタックやねん」って、自分だけでなくチームのみんながドヤ顔で言えるように。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る